DISK

「BUT BEAUTIFUL」北村秀人(VENUS TKCV-35046)
北村秀人(ts) 堺 敦生(ep) 厨子秋男(b) 平沢清二(ds) 1992年6月2日録音
@But Beautiful ADolores BBirks Works CAlone Together DMoonlight In Vermont ECheese Cake
 97年7月に63歳の誕生日を目前に亡くなった北村秀人の唯一のリーダー・アルバム。死後1年経ってからヴィーナス・レコードから発売された。日本にもこんなテナーマンがいたことに驚いた。北村の奏法はコルトレーンなどと違い、メロディーの美しさを重視しているようで、どちらかというとデクスター・ゴードンなどに近いがそのハスキーヴォイスは独特のものがあり、私が聴いた狭い範囲での日本のテナーマンにはない独自性があるように思う。淀みないアドリブフレーズはそれこそ「唄心」に溢れている。92年6月の録音であるから、57歳の時に吹きこまれた作品だが、全体に覇気がある。
 ライナーノーツによると、生前何度もアルバムのための録音を行なったそうだが、本人はなかなか納得しなかったそうで、よい意味での完全主義者だったとのこと。くしくも同年に亡くなられたKJFCのソウルブラザー小西徹さんと近い職人気質を持たれていたのだろう。それともこの世代共通のジャズと自分の音に対するよい意味でのスタイリストだったのかもしれない。
 演奏はスタンダードばかりで、どれも素晴らしい。特にCDEの3曲は珠玉の輝きがある。ただ私は自分が嫌いなだけに電気ピアノが入っているのが残念に思う。(我蘭堂)

「VOICE」斉藤真理子(WHAT'S NEW RECORDS WNCJ-2114)
斉藤真理子(p) 俵山昌之(b) 田鹿雅裕(ds) 2002年5月9日録音
@What Is This Thing Called Love AScramble Eggs BShimanto CThis Here DVoiceEThe Duke FTurn To The Left GEstate HBlue Monk
ジャパンのジャズメッセンジャ−ズを自称する小林陽一のグッドフェローズで長年ピアニストを務めた斉藤真理子の初リーダー・アルバム。彼女はKJFCともゆかりがある太田剣が大きくフュ−チャ−された「ジャズ新鮮組」(キング KICJ-354)でもフロント陣の若手を小林とともに支えるプレイをしていた。現在は都内を中心としたライブシーンで活躍している。
スタンダードの@では冒頭からテンション高いアドリブから入る。よい意味で緊張感あるフレーズがつながり、実力をうかがわせる。リー・コーニッツの「モーション」というアルバムを想起してしまった。最後にやっと聞きなれた旋律が出てきたが、この有名曲を自分なりに変えてしまうあたりは、名刺代わりの「きつい一発」だった。ABはオリジナル曲。作曲の才能の片鱗を見せる。が曲作りとともにAでの右手の奏でる旋律を自ら煽りたてるような左手で刻むブロックコードには迫力がある。ボビー・ティモンズのCは最近取り上げる人が少ないのではないだろうか。奔放なアドリブが楽しげだ。タイトル曲Dは一転してスローな情感溢れるバラードだが、単に甘い旋律を奏でるだけでなく、緩急自在な表現で魅了させられる。敬愛する先輩に捧げられたようなEとHは、オーソドックスな演奏で尊敬の念が伝わってくる。バックの俵山昌之と田鹿雅裕も息の合ったプレイだ。(我蘭堂)